ゴルフに特化したフィジカルトレーニングを行っているのに、なかなかゴルフのスコアが改善されないという経験をお持ちの方も多いかもしれません。これにはいくつかの理由が考えられます。
ゴルフの上達にはフィジカルトレーニングだけでなく、様々な要素が組み合わさって初めて成果が現れるからです。今回は、なぜフィジカルトレーニングだけではゴルフが上達しづらいのか、日頃患者さんともお話しする機会が多いテーマなので、詳細を添えてお話しします。
自身は、トレーニングを担当するお客様から、「先生のところに通ったらゴルフが上手くなった」と言っていただくことがよくあります。大変嬉しいお言葉なのですが、私が行うトレーニング指導や体のケアで上手くなるというのは、過剰な評価であるといえます。
1. 技術とフィジカルのバランス
ゴルフは体力や筋力だけのスポーツではないからです。
正確な技術、戦略的な思考、そして心理的な要素が複雑に絡み合っています。フィジカルトレーニングが体を強化し、スイングのパワーを増すことはできますが、それだけではスコアを改善するには限界があります。例えば、スイングの正確性やボールコントロールの技術は、練習によって磨かれるものです。
R. Smithの研究(”Golf Training: The Role of Physical and Technical Training” in Journal of Sports Sciences, 2017)によると、フィジカルトレーニングを行っても、それをゴルフの技術向上に直接的に結びつけるための適切な指導がなければ、スキルの向上は期待できないとされています。
2. トレーニングの特異性
フィジカルトレーニングを行う際には、そのスポーツ特有の動作や筋肉の使用に焦点を当てることが重要です。ゴルフにおいては、特定の筋肉群だけを強化するのではなく、スイングに関わる全身の協調を高めるトレーニングが求められます。単に筋力を増やすだけのトレーニングでは、実際のゴルフスイングの改善にはつながりにくいのです。
L. Johnson et al.(”Effectiveness of Sport-Specific Training for Golfers” in American Journal of Sports Medicine, 2015)の研究では、ゴルフ専用のトレーニングプログラムがゴルフパフォーマンスに与える影響が他の一般的なフィットネストレーニングよりも有意に大きいことが示されています。
3. 総合的なアプローチの欠如
ゴルフスキルの向上には、フィジカルトレーニングの他にも技術練習、戦略的なゲーム管理、メンタルトレーニングなどが必要です。これらの要素がバランス良く組み合わされることで初めて、ゴルフのパフォーマンスは向上します。フィジカルトレーニングに偏りすぎると、他の重要なスキルが疎かになりがちです。
結論
フィジカルトレーニングはゴルフスキルの向上には不可欠ですが、それだけでゴルフがうまくなるわけではありません。技術的な練習、戦略の理解、心理的な強さを鍛えることも同様に重要です。トレーニングの計画には、これら全体を見渡し、バランスの取れたアプローチを心がけることが、ゴルフの上達への鍵となるでしょう。それには、一人ひとりのニーズに合わせた個別の指導が効果的といえます。