ゴルフにおける体重と飛距離の関係性:適正体重は存在するのか?vol.301

女子プロゴルフにおいて、体重と飛距離の関係性は長らく議論の的となってきました。多くのゴルファーやコーチが、体重が飛距離にどのように影響するのかに関心を寄せています。しかし、実際のところ、体重だけで飛距離を予測するのは容易ではありません。個々の選手の技術、筋力、スイングメカニクス、フィットネスレベルが飛距離に大きく影響するためです。

本コラムでは、体重と飛距離の一般的な傾向をデータとともに示し、女子プロゴルファーにおける適正体重の概念について考察します。

先日、治療院に見えたアマチュア選手の親子からの相談で、「ゴルファーの適正体重あるのか?」という質問がありました。
体重がなかなか増えないという悩みを抱える選手です。食べても食べても増えないそうです。食べるとすぐに身になっていくことで悩やむ選手もいますが、基本的には適正体重はないスポーツと考えているので、そのように伝えました。

ただし、飛距離に悩む選手は、技術的なことに加えやはり体重も気にします。私がこれまでの指導で一貫している点は、「ゴルフの調子と体重」を記録していくこと。その先に「ベスト体重」が見えてくるだろうという考え方です。私がこれまで携わらせていただいた選手から得られた情報をまとめていくと、ツアーで戦う選手にはベスト体重の意識がある。そのベストより数キロ増えていると飛ぶけど疲れやすい、腰の張りが強くなる…etc。または2・3キロ減っている場合には、食事をすることで体重をキープしようとしているようです。軽くなるとフワフワすると表現される方もいました。

例えば体重が増えることで、インパクトの感触が強くなり飛距離も上がるとその体重がベストだと、一瞬考える若い選手も多い印象です。しかしながら体重が増えたことで得られるインパクトの感触を「麻薬」だと表現するベテランプロの言葉をあるのです。何が麻薬なのか。感触はいいのだけど、そこに頼りすぎるスイングに変わってしまったり、下半身が疲れやすくなったり、手首の負担が増えたりするのではないかという見解なのです。

結論的に言えば、女子プロゴルフにおいて、体重と飛距離の関係性は一概に決定できるものではありません。個々の選手の技術、筋力、スイングメカニクス、フィットネスレベルが大きく影響するため、単純に体重だけで飛距離を予測することは難しいのです。

しかし、一般的な傾向と平均的なデータがあったので共有してみます。

一般的な傾向

女子プロゴルファーの体重と飛距離の関係性は次のように概略されます

スイングの効率と技術

技術が高く、効率的なスイングを持つ選手は、体重が軽くても長い飛距離を出すことができる。

筋力とフィットネス

筋力トレーニングを行い、体幹や下半身の筋力を強化している選手は、体重が増加しても飛距離を伸ばすことができます。

スイングスピード

スイングスピードが速い選手は、同じ体重でもより長い飛距離を出せます。

具体的なデータ

女子プロゴルフにおける体重と飛距離の関係性を示す具体的なデータは、選手ごとのばらつきが大きいですが、以下のような例が挙げられます。体重は飛ばすための要素の一つであるので、飛ばすためには体重以外にも必要でありますので、例えば体重50kg前後の選手が240y飛ばすとしたら、かなりスイングスピードが早く、効率性が高い選手といえるというように表記させていただきました。

体重 50kg 前後の選手

平均飛距離:約220ヤード〜240ヤード

例:小柄でスイングスピードが速い選手

体重 60kg 前後の選手

平均飛距離:約230ヤード〜250ヤード

例:筋力トレーニングを行い、フィットネスレベルが高い選手

体重 70kg 前後の選手

  • 平均飛距離:約240ヤード〜260ヤード
  • 例:高い筋力と効率的なスイングを持つ選手

関連文献

  • Cheetham, P. J., Martin, P. E., Mottram, R. E., & St. Laurent, B. F. (2001). The importance of stretching the “X-Factor” in the golf downswing. Sports Biomechanics, 1(1), 39-52.
  • Zheng, N., Barrentine, S. W., Fleisig, G. S., & Andrews, J. R. (2008). Kinematic analysis of swing in pro and amateur golfers. International Journal of Sports Medicine, 29(7), 487-493.

結論

女子プロゴルフにおいて、適正体重というものは存在せず、各選手の体重と飛距離の関係性は個々の技術、筋力、フィットネスレベルによって大きく異なります。上記の例を参考にしつつ、個々の選手が自分に最適な体重とトレーニング方法を見つけることが重要です。また、飛距離を向上させるためには、体重だけでなく、スイングの効率や筋力トレーニングの重要性も考慮する必要があります。

この情報が、ゴルフの技術向上と理解の助けになることを願っています。