星野陸也選手に学ぶ:0.5gの違いを感じ取るクラブ意識の極意」vol.332

「クラブ意識が高い選手が、体意識が高くなりすぎると調子を崩す」と聞いたことがありますか。
ジュニアから天才といわれるような方が、プロになり急に調子を崩されたりするケースがあるといいます。このテーマに関連する科学的な検証はいくつかの観点から考察できますが、ゴルフ限定で直接的にこの現象を立証する研究はまだ限られています。ただし、スポーツ心理学や運動科学の分野で行われた研究から、関連する知見を導き出すことが可能です。ゴルフにおいて、クラブに対する意識を持つことは非常に重要ですが、SNSで流れている動画は動きの話ばかり。時として体の動きに対する意識が過度になると、かえって調子を崩すことがあるといいます。クラブの動きを正確にコントロールするためには、自然な体の動きが不可欠です。しかし、体の動きに過度に集中しすぎると、スイングが硬直し、自然なリズムやタイミングを失うリスクがあります。

特に、クラブ意識が高い選手は、技術的な細部に注意を払う傾向がありますが、その一方で体の動きを意識しすぎると、本来のスムーズなスイングを損なうことがあります。これにより、思い通りのショットが打てなくなり、結果としてスランプに陥ることも考えられます。クラブと体のバランスを保つことが、安定したパフォーマンスを維持するために重要であり、適度なリラックスが必要です。

このテーマは、ゴルファーがクラブと体の動きのバランスをどのように取るべきか、そしてそのバランスがパフォーマンスに与える影響について考えるきっかけとなるでしょう。

https://news.golfdigest.co.jp/news/results/eupg/article/164461/1/

 

1. 動作の自動化と注意の分散

運動学習において、熟練した動作は自動化される傾向があります。これにより、選手は動作そのものを意識せずに自然に行うことができます。しかし、体の動きに過度に意識を集中すると、この自動化されたプロセスが妨げられ、結果としてスムーズな動きが損なわれる可能性があります。研究では、熟練者がパフォーマンスにおいて、動作の詳細な部分に意識を向けると、パフォーマンスが低下することが示されています 。

2. 焦点の切り替えとパフォーマンス

スポーツ心理学の分野では、プレイヤーが「内的焦点(体の動きに対する意識)」から「外的焦点(クラブやボールの動きに対する意識)」に焦点を切り替えることで、パフォーマンスが向上することが示されています。内的焦点に偏りすぎると、動作が不自然になり、結果としてスイングのタイミングやバランスが崩れるリスクがあります 。

3. 緊張とパフォーマンスの関係

また、緊張がパフォーマンスに与える影響についても広く研究されています。過度な意識や緊張は筋肉の硬直を引き起こし、自然な動きを阻害することが知られています。ゴルフのスイングにおいても、体の動きに対する過度な意識がこのような硬直を引き起こし、結果としてパフォーマンスの低下を招く可能性があります 。

クラブ意識を高める

1. 目を瞑っての素振り

目を閉じて素振りを行うことで、視覚に頼らずにクラブの動きを感じる練習ができます。視覚情報を遮断することで、手元の感覚やクラブの動きに集中しやすくなり、微細な動きやクラブの重さ、バランスを感じ取る力が養われます。この練習は、クラブの軌道やスイングのリズムを体で覚えるために非常に有効です。

2. 夜間の素振り

夜間にクラブの動きだけを見ながら素振りをすることで、クラブの動きに対する感覚がより鋭くなります。照明が少ない環境では、クラブの動きを強く意識する必要があるため、スイングの軌道やクラブフェースの向きを正確に捉える力が鍛えられます。また、夜間は周囲の視覚的な情報が少ないため、集中力が高まりやすいという利点もあります。

3. クラブの重さを感じるドリル

クラブの重さや慣性を感じながらスイングすることを意識する練習も効果的です。例えば、スロースイングでクラブの重さを意識する、または重めのクラブを使って素振りをすることで、クラブの動きに対する感覚を研ぎ澄ますことができます。

4. 鏡を使ったスイング確認

鏡の前でスイングを確認しながら、クラブの位置や動きが理想的な軌道を描いているかをチェックすることも有効です。視覚的に確認することで、クラブの動きを正しく理解し、体感と一致させることができます。

5. 感覚的なフィードバックを重視

スイング後に自分の感覚をメモしたり、クラブの動きに対する自分の感覚を分析することで、クラブ意識を高めることができます。このようにして、自分のスイングとクラブの動きがどのように一致しているのかを理解し、改善点を見つけることができます。

これらの方法を取り入れることで、クラブに対する意識を高め、スイングの精度を向上させることが可能です。クラブの動きを自分の一部のように感じられるようになると、パフォーマンスの安定性が増し、スランプのリスクも軽減できるでしょう。

クラブ意識の高いプロ

クラブ意識の高いプロゴルファーとして、0.5gの重さの違いがわかることでゆめいな星野陸也選手。星野陸也選手がクラブの重みをg単位で感じ取れるというのは、彼のクラブに対する非常に高い感覚と繊細なフィードバック能力を表しています。これは、ゴルファーとしての優れた能力の一例であり、クラブと体のバランスを完璧に調整するために重要です。

クラブの重さやバランスを細かく感じ取る能力は、スイングの精度や一貫性に直結します。クラブの重みをg単位で感じ取ることができるということは、クラブの動きや振り抜きに対して非常に鋭敏な感覚を持っていることを示しています。このような感覚があれば、クラブが持つ慣性やバランスを最大限に活用し、安定したスイングが可能になります。

星野選手のようにクラブの重さを細かく感じ取るためには、長年の練習と経験、そしてクラブに対する深い理解が必要です。これは、一流のゴルファーが高いパフォーマンスを維持するために不可欠な要素であり、スランプを避けるための鍵とも言えます。

このような感覚を養うためには、日々の練習においてクラブの動きに細心の注意を払い、自分の体とクラブの一体感を深めることが重要です。星野選手の例は、クラブ意識を高めるための理想的な目標と言えるでしょう。

 

まとめ

これらの研究から、クラブの動きに意識を集中させることが重要である一方で、体の動きに過度に意識を向けすぎると、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。科学的な視点からも、クラブと体のバランスを保ちながら自然なスイングを維持することが、スランプを防ぐために重要であると言えるでしょう。

引用:Lowen, J. (2011). The effect of shifting between internal and external foci of attention on throwing accuracy. The Plymouth Student Scientist, 4, 83-103.

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