ゴルフスイング中の首の痛みの原因と対策:TPIアプローチの活用 vol.348

ゴルフの世界で知られるタイトリストパフォーマンス研究所(Titleist Performance Institute, TPI)は、カリフォルニア州オーシャンサイドに位置し、ゴルファーのパフォーマンス向上を目的とした科学的な研究とトレーニングを行っています。TPIは、世界中のゴルフプロフェッショナルやトレーナー、フィジオセラピストと連携し、ゴルファーの身体的特性とスイングパフォーマンスの関連性を解明することに注力しています。私も2017年にオーシャンサイドの施設を見学させていただきました。TPIのアプローチは、ゴルファーの体を評価し、最適なトレーニングやストレッチを提供することで、怪我の予防やパフォーマンスの最大化を目指しています。

ゴルフスイングは全身を使う複雑な動作であり、その中でもダウンスイングは特に大きな力が加わる瞬間です。この動作中に左側の首に痛みを感じる場合、その原因はさまざまであり、TPIのアプローチを活用することでその原因を特定し、適切な対策を講じることが可能です。本コラムでは、TPIが提供する具体的な方法を用いて、首の痛みを軽減するためのアプローチを解説していきます。

Titleist Performance Institute Oceanside, California HIRANO

1. スイングの技術的な問題

TPIのスクリーニングを通じて、スイング中の体の動きの不調和を特定することができます。例えば、スイング中に「リバーススパインアングル」(リバースピボット)が発生すると、上半身が過度に後方に傾き、首や肩に不自然な負担がかかることがあります。この姿勢は、特にダウンスイング時に体が適切に回転できず、力が首に集中することで痛みを引き起こすことがあるのです。

対策としては、リバーススパインアングルを改善するためのドリルやエクササイズを行い、背中や腹筋の強化に努めることが有効です。これにより、骨盤の適切な回転を意識し、首への負担を軽減することができます。

Titleist Performance Institute Oceanside, California a-sidestrength NAKAMURA

2. 柔軟性の不足

柔軟性の不足も、首の痛みの一因となります。特に、肩甲骨や胸椎の可動域が制限されていると、スイング中に体が十分に回転できず、首に不自然な力がかかることがあります。TPIの柔軟性テストでは、これらの可動域を評価し、制限がある場合は適切なエクササイズを導入することが推奨されます。

例えば、「トルソーローテーション」や「肩甲骨のストレッチ」などのエクササイズを取り入れることで、肩甲骨や胸椎の柔軟性を向上させることができます。これにより、体がスムーズに回転できるようになり、首にかかる負担を軽減することが可能です。

3. 筋力のアンバランス

筋力のアンバランスもまた、首の痛みを引き起こす要因の一つです。TPIの筋力テストで左右の筋力や安定性に差があることが判明した場合、スイング中に特定の部分に過度な負担がかかりやすくなります。左側の肩や首の筋力が弱いと、その部分が緊張しやすく、痛みを引き起こす可能性があります。

これを改善するためには、左右の筋力バランスを整えるエクササイズが有効です。特に、肩甲骨周りの筋肉や体幹を強化するエクササイズが推奨されます。「ローテーションスタビリティエクササイズ」や「プランクエクササイズ」は、体幹の安定性を高め、首への負担を減らす効果があります。

4. スイング中の過度な力の入りすぎ

スイング中に過度に力が入りすぎると、筋肉が過剰に緊張し、首や肩に負担がかかることがあります。TPIの評価を通じて、スイング中に余分な力が入っていることが判明した場合、スイングの効率を改善するためのトレーニングが必要です。

具体的には、「パワージェネレーションエクササイズ」や「テンポトレーニング」を活用して、力の伝達をスムーズに行えるようにすることが重要です。これにより、過度な力が首や肩に集中することを防ぎ、よりスムーズで安全なスイングが可能になります。

5. 姿勢の問題

ゴルフスイングにおける姿勢の問題も、首の痛みに繋がることがあります。TPIの「ポスチャーテスト」でアドレス時の姿勢やスイング中の体の動きを評価することで、姿勢の問題点を特定し、修正することができます。例えば、前屈姿勢が強すぎたり、頭が過度に前に出ていたりすると、首に過度な負担がかかります。

姿勢を改善するためには、「ポスチャーエクササイズ」を取り入れることが有効です。これにより、骨盤の安定性を高め、胸を開いて首や肩を自然な位置に保つことができ、首への負担を軽減することができます。


TPIのアプローチを活用することで、ゴルフスイング中の首の痛みを効果的に予防・改善することが可能です。自身のスイングや身体の状態を適切に評価し、必要なエクササイズやトレーニングを取り入れることで、より安全でパフォーマンス向上に繋がるスイングを実現しましょう。ゴルフを楽しむためにも、身体のケアを怠らず、無理なく続けていくことが大切です。