スイング改革への道 – 練習場からコースへ、成功するための3ステップ①vol.351

「この前のラウンドどうだったんですか?」と患者A様に問いかける。ゴルフをされる患者さんは少し肩を落としながらこう答えました。「最近スクールを変えて、いろいろ指導を受けたんですが、いざコースに行くと、散々な結果で…」。コースでは、なかなか新しいスイングが定着せず、元のスイングに戻ってしまう。この問題は、A様だけではなく、多くのアマチュアが、そしてプロゴルファーも経験することだとおもいます。そこで、今回その理由を科学的に見るとどういうことか、調べてみることにしました。成功するための3ステップと題して3回に分けて投稿させていただきます。

ステップ1

新しいスイングが身につかない理由

ゴルフスイングが練習場では成功しても、コースに出ると元のスイングに戻ってしまう現象は、科学的にいくつかの要因で説明できそうです。私が関わってきたプロゴルファーに話を聞いても、新しいスイングを練習場で身につけ、コースで確かめ、試合で確かめると単純に3段階あると言います。以下にその主要な要因を挙げてみます。

1. 神経筋記憶 (Motor Memory)

神経筋記憶は、長期間にわたって繰り返された動作が筋肉と神経系に記憶される現象です。新しいスイングを学んでも、古いスイングのパターンが長期間にわたって体に染み付いていると、コースでプレッシャーや緊張を感じると、無意識に体が慣れ親しんだ動きに戻ってしまうことがあります。これを「リバート・トゥ・タイプ(revert to type)」と呼ぶこともあります。

2. 練習環境と実際のプレー環境の違い

練習場では環境が一定であり、プレッシャーや変動要因が少ないため、集中して新しいスイングを繰り返し練習できます。しかし、コースに出ると、風、地面の傾斜、緊張感、競技のプレッシャーなどが加わり、これらの外的要因が無意識のうちに元のスイングパターンを引き出す原因になります。

3. 感覚のフィードバックと心理的影響

新しいスイングを試みる際、感覚的な違和感や不安感が生じることがあります。特にコースでは、ミスショットへの恐怖や競技の結果に対するプレッシャーが強まると、感覚的に「安全」と感じる元のスイングに戻ってしまうことがあります。これは心理的な保守性とも言えます。

4. 習慣の力と時間的な制約

習慣の力は非常に強力です。新しいスイングを完全に定着させるには、長期間にわたる繰り返し練習と、コースでの実践経験が必要です。コースでのラウンド回数が少ない場合、練習場での新しいスイングが十分に習慣化される前に、コースでの旧習慣が勝ってしまうことが考えられます。

これらの要因を克服するためには、練習場での練習とコースでの実践をバランスよく行い、実際のプレー環境で新しいスイングを意識的に試みることが重要です。また、メンタルトレーニングやフィードバックの活用も、スイングの変化を定着させる上で有効です。

次回は「リバート・トゥ・タイプとは? – プレッシャー下で元に戻るスイングのメカニズム」と題して投稿する予定です。お楽しみに。