私のように医療に携わるものが、ゴルファーである患者さんのゴルフスイングを見た際に、例えば腰痛が、ゴルフスイングエラーに起因するものであれば、より傷害リスクの低い理想的な形へと導くことがあります。
しかしながらゴルフとは、そもそもターゲットスポーツであり、ゴルフスイングにおけるエラーを必ずしも改善する必要はありません。
実際、一部のエラーは個々のプレーヤーの独自のスイングスタイルや体の特性に合致している場合があります。例えば背中が丸まっている70代・80代のゴルフプレーヤーであっても70台で回ったり、エージシュートを何度も繰り返している方がいらっしゃるのはみなさんご存知かと思います。
自身も、アメリカチャンピオンズツアーで、室田淳プロに帯同させていただいた際、マスターズやUSオープンで優勝されている選手たちを観戦させていただきましたが、そこで感じたのは必ずしも綺麗なスイングではないということ。付け加えるのであれば、医療人やトレーナーサイドが「正しいアドレス」と模範とされているような姿の選手は、殆ど見られなかったと言っても過言ではありません。
これは、一体なんでしょうか…一言で表せば、上記のプレーヤーたちのゴルフスイングは、ゴルフスイングに必要な最低限必要な要素がきっちり詰め込まれているからではないでしょうか。
これには、森ゼミ(森守洋プロ主催)で学習させていただいた、物理学を用いたゴルフスイングの原理原則の解説を加えなければいけませんが、情報量として増えてしまいますので、今回は割愛させていただきます。
ゴルフスイングエラーを改善しない場合の利点
ただ、スイングエラーはフィジカルが原因で起きてくることが多々あります。スイングエラーは全てあっていいということではなく、長くエラーの指摘をされ続けているのに、何年も改善できない方へ向けては、最終的には少しでも背中を押すことができたらと考えております。関連コラムは、本日から20件ほどの投稿(カテゴリー:スイングエラー)になると思いますが、慌てずに一読いただけると幸いです。
1. 一貫性の確保
ゴルフスイングにおける特定のエラーが、プレーヤーにとって一貫した結果をもたらしている場合、そのエラーを修正することは逆に一貫性を損なう可能性があります。エラーを受け入れ、そのエラーに合わせた調整を行うことで、より一貫したスイングを実現することができます。
2. プレーヤーの個性を尊重
ゴルフは個々のプレーヤーが独自のスイングスタイルを持つスポーツです。特定のエラーがそのプレーヤーの個性や体の特性に合致している場合、そのエラーを修正することは、そのプレーヤーの個性を損なう可能性があります。エラーを受け入れ、プレーヤーの個性を尊重することで、より自然なスイングを発揮することができます。ここで言う個性とは、リズムや運動能力・感覚のことです。感覚を損ねてまで理想のスイング形に導く必要がないことは、当然と言いたいところですが、実際には誰でも同じスイングを指導されているコーチは多いかもしれません。
3. ストレスやプレッシャーの軽減
特定のエラーを修正しようとすることは、しばしばストレスやプレッシャーを生む原因になります。プレーヤーがそのエラーを受け入れ、自分自身を過度にストレスを感じることなくプレーできるようにすることも重要です。
ここでタバコの話を入れるのは違うかもしれませんが、私が幼少期の頃、電車の中でも駅のホームでもタバコを吸う方は非常に多く、電車が来ると線路にタバコを投げるので、線路が吸い殻の山のような時代でした。当時の喫煙率は7割以上と言いますが、今は受動喫煙禁止にもなり、喫煙スペースも限られたせいか、男女で15.6%まで下がっていると言います。ただ喫煙者が減った割に肺がんの患者さんは増え続けているのはご存知でしょうか。その原因は定かではありませんが、ストレスに起因するのではないでしょうか。50年以上吸い続けてきた方がやめた途端に脳梗塞を起こしたなんていう話もあるほど、ストレスが体に与える影響は未知です。
ゴルフにおいても、過剰なストレスを受けて、落ち込んでしまう方、俗に言うイップスになる方は少なくありません。
改善はできる限り短時間で行いたい
ゴルフであっても、特定のエラーの修正は、できれば「短時間」がいいでしょう。たくさんのストレスを抱え何年もかけて改善すべきことなのかどうか。ただし、ゴルフスイングにおけるエラーがパフォーマンスに悪影響を与える場合や、ゴルフスイングを改善することでケガのリスクを軽減する場合は、そのエラーを改善することが望ましい場合もあります。したがって、エラーを受け入れるか改善するかを判断する際には、プレーヤーの個別の状況や目標を考慮することが重要といえます。